物販の在庫管理はどうする?回転率の計算から適正在庫の保ち方まで解説

物販を続けていると、いつの間にか売れない商品が積み上がっていることがあります。売上は立っているのに手元の現金が増えないという状態も、その多くは在庫が原因です。
在庫管理というと、大がかりなシステムを想像するかもしれません。ただ、副業や個人の規模であれば、表計算ソフトと2つの指標があれば十分に回せます。
本記事では、在庫を管理する理由と見るべき指標を整理したうえで、個人規模での具体的な管理方法、適正在庫を保つ工夫、年末の棚卸しまでを解説します。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
|---|---|---|
| なぜ在庫管理が必要? | 在庫は現金が形を変えたもの | 動かない在庫が増えるほど、次の仕入れに使える資金がなくなります。 |
| 何を指標にすればいい? | 在庫回転率と回転日数 | 売上原価を平均在庫金額で割れば、在庫が何回入れ替わったかが分かります。 |
| 個人でも仕組みは必要? | 表計算ソフトで十分 | 数十点の規模なら、専用のシステムを入れる前に手元の表で管理できます。 |
| 年末にやることは? | 棚卸しで在庫を確定する | この作業をしないと売上原価が計算できず、所得も確定できません。 |
この記事でわかること
- 在庫を管理しないと何が起こるのか
- 在庫回転率と在庫回転日数の計算方法
- 適正在庫を求める計算式
- 表計算ソフトで管理するときの項目と運用
- 年末の棚卸しでやるべきこと
物販で在庫管理が必要な理由
まず、なぜ手間をかけて管理するのかを整理します。目的が分かれば、どこまでやるかも判断できます。
在庫は現金が形を変えたもの
最も重要な考え方です。仕入れた商品は、手元の現金が別の形になっただけであり、売れて初めて現金に戻ります。
動かない在庫が増えるほど、次の仕入れに使える資金は減ります。売上が伸びているのに手元が苦しいという状態は、この現象が起きているサインです。
資金が在庫に固定されると、良い商品を見つけても仕入れられません。機会を逃す原因にもなります。
売れ行きが読めない段階ほど、在庫を厚くしないことが重要になります。小さく試して確かめてから増やしてください。
在庫を管理することは、資金の状態を把握することと同じ意味を持ちます。
帳簿上は利益が出ているのに、手元に現金がないという状況も起こります。利益と現金の動きは一致しません。
この感覚を持っておくと、まとめ買いで単価を下げるという判断にも慎重になれます。安く買えても現金が減ることに変わりはありません。
在庫は動いてはじめて価値を生みます。棚に置いてあるだけの状態は、資金が止まっているのと同じです。
管理しないと税金の計算もできない
物販特有の事情です。その年の経費になるのは売れた分の仕入れ代だけで、残った在庫は資産として翌年に繰り越されます。
つまり在庫の金額が分からなければ、売上原価も所得も計算できません。確定申告そのものが成立しなくなります。
帳簿を残していれば、事業所得として扱いやすくなるという利点もあります。記録は税務の面でも意味を持ちます。
日頃から記録していないと、年末にすべて数え直すことになります。作業量が何倍にも膨らみます。
在庫を多く抱えたまま年を越すと、現金がないのに帳簿上の所得だけが大きく出ます。納税資金を確保していないと苦しくなります。
欠品も過剰も損失になる
在庫は少なければよいというものでもありません。売れているときに品切れを起こせば、その分の売上を失います。
積み上げてきた検索順位が下がることもあります。品切れの期間が長引くほど、再開後に戻すのが難しくなります。
購入しようとした人が競合に流れれば、その顧客は戻ってきません。欠品の損失は売上の減少だけではありません。
価格競争を避けて安定して売り続ける考え方については、AmazonOEMは中国セラーが50%を占めている?日本人セラーが勝ち続けるための3つの戦略も参考になります。
目指すのは、欠品による機会損失と過剰在庫によるコストの両方を避けられる水準です。これを適正在庫と呼びます。
どちらに寄せるべきかは、資金の状況で変わります。資金が薄い時期は欠品を許容してでも在庫を減らすという判断もあります。
逆に売れ行きが安定してきたら、多少多めに持ってでも欠品を避けるほうが利益は増えます。段階によって最適解は変わります。
在庫管理で見る2つの指標
感覚ではなく数字で判断するために、2つの指標を押さえておきます。
在庫回転率の計算方法
在庫回転率は、一定期間に在庫が何回入れ替わったかを示す指標です。金額で計算する方法と数量で計算する方法があります。
金額で見る場合は、期間の売上原価を平均在庫金額で割ります。年間の売上原価が100万円、平均在庫金額が10万円なら、在庫回転率は10です。年間で在庫が10回入れ替わった計算になります。
平均在庫金額は、期首と期末の在庫金額を足して2で割れば求められます。月ごとに記録していれば、より正確な平均が出せます。
数量で見る場合は、期間の出庫数量を平均在庫数で割ります。年間100個出て平均在庫が50個なら回転率は2です。
数値が高いほど速く売れており、低いほど滞留しているという意味になります。
どちらの方法で計算しても、1つの商品が売れているペースを把握できます。売れ筋と滞留品を切り分ける材料になります。
全体で1つの数字を出すだけでなく、商品ごとにも計算してください。平均だけを見ていると、問題のある商品が埋もれます。
数量ベースは日々の発注判断に、金額ベースは全体の資金効率を見るのに向いています。目的で使い分けてください。
在庫回転日数で実感に変える
回転率だけでは感覚がつかみにくいため、日数に直します。対象期間の日数を在庫回転率で割ると、在庫が入れ替わるまでの日数が出ます。
30日を基準に回転率が2なら、30÷2で15日です。回転率を3に上げられれば10日になります。同じ売上を15日ではなく10日で作れるという意味です。
回転が速くなれば、同じ資金でより多くの取引ができます。資金の少ない段階ほど、この指標は重要になります。
原価率がやや高い商品でも、回転が速ければ月の利益額は大きくなります。率だけで判断しないでください。
この日数が分かると、次の発注のタイミングも決められます。仕入れから届くまでの期間と照らし合わせれば、いつ動くべきかが見えてきます。
回転日数が仕入れのリードタイムより短ければ、発注が間に合わずに欠品します。この2つは必ずセットで確認してください。
適正在庫の求め方
目標を数字にする方法もあります。適正在庫金額は、期間の売上原価を目標の在庫回転率で割って求めます。
例えば年間の売上原価が240万円で、目標の在庫回転率を12回とするなら、適正在庫金額は20万円という計算になります。
目標の回転率は、粗利益率と組み合わせて決める方法もあります。利益率が低い商品ほど、高い回転率が必要になります。
計算式を覚えるより、自分の商品で一度計算してみるほうが理解は早く進みます。数字を入れて確かめてください。
商品の特性によって適切な水準は変わります。回転率が低いから悪い商品だとは限らず、業種や季節でも数値は動きます。まずは自分の過去の実績と比べてください。
前年の同じ時期と比べると、改善しているかどうかが分かります。他社の数字より、自分の推移を見るほうが実務では役立ちます。
数字が悪化している場合は、仕入れすぎか販売不振のどちらかです。原因を切り分けてから手を打ってください。
個人・副業規模での在庫管理の方法
専用のシステムを入れる前に、手元でできることから始めます。
表計算ソフトで始める
扱う点数が数十点の規模なら、表計算ソフトで十分に管理できます。無料で使えるものもあり、外出先から確認できる形にしておけば店舗でも参照できます。
最初から完璧な形を目指す必要はありません。項目を増やしすぎると記録が面倒になり、続かなくなります。
まずは最小限の項目で始めて、必要を感じたら足していくほうが定着します。
スマートフォンからも編集できる形にしておくと、発送のたびにその場で更新できます。手間が減るほど続きます。
無料のテンプレートも公開されています。ゼロから作るより、既存の形を自分用に調整するほうが早く始められます。
項目を足すときは、その情報を何の判断に使うのかを考えてください。使わない項目は記録の手間を増やすだけです。
記録する項目
基本となるのは次の項目です。商品名、識別番号、仕入れ日、仕入れ数、仕入れ単価、販売価格、現在の在庫数、保管場所を並べます。
あわせて、売れた日も記録しておくと回転日数が計算できます。仕入れから販売までに何日かかったかが分かれば、次の発注量の判断材料になります。
商品ごとの利益額も同じ表に入れておくと、どの商品が資金を生んでいるかが一目で分かります。
複数の販路で売っている場合は、どこに何個置いているかも記録します。合計だけを見ていると、片方で欠品していることに気づけません。
更新のタイミングを決める
記録が続かない原因は、更新のタイミングを決めていないことにあります。発送した日にその場で数を減らす、週に一度まとめて更新する、といったルールを先に決めてください。
後でまとめてやろうとすると、必ず抜けが出ます。数が合わなくなると、修正のために全部数え直すことになります。
発送作業と記録をセットにするのが最も確実です。1つの流れにしてしまえば、忘れることがなくなります。
月に一度は実物と表の数を突き合わせてください。ずれが小さいうちに直せば手間は少なく済みます。
ずれが出る原因も記録しておきます。返品なのか、記入漏れなのか、破損なのかで対策は変わります。
倉庫やツールを使う判断
取引件数が増えて手作業が追いつかなくなったら、外部のサービスを検討します。保管と発送を代行するサービスを使えば、作業時間は大きく減ります。
ただし保管料と配送代行の費用が発生し、その分だけ利益は削られます。時間が足りないのか、資金が足りないのかで判断してください。
外部に預けると、実物を自分で確認できなくなります。在庫表の精度がより重要になる点も踏まえておいてください。
導入する前に、何時間短縮できて何円分の価値があるかを計算してください。数字にすれば判断は簡単です。
原価と利益のバランスについては、AmazonのOEMで「儲からない」は本当?失敗しないための5つの秘訣と成功事例でも整理しています。
適正在庫を保つ5つの工夫
数字を把握したうえで、実際に在庫を適正な水準に近づける方法を挙げます。
リードタイムから逆算して発注する
在庫が尽きてから発注するのでは遅すぎます。仕入れてから手元に届くまでの日数を把握し、そこから逆算して発注のタイミングを決めてください。
海外から仕入れる場合は、輸送と通関で数週間かかることもあります。現地の連休が重なればさらに延びます。
必要な資金の内訳や輸入に伴う流れは、中国輸入OEMはオワコン?儲からない?穴場副業で稼げる理由を解説でも整理しています。
リードタイムを短縮できれば、抱える在庫の量も減らせます。仕入れ先との関係づくりも、在庫管理の一部です。
継続して発注している相手なら、繁忙期でも枠を確保してもらえることがあります。日頃の関係が納期に効いてきます。
発注点を決めておく
在庫が何個を切ったら発注するかを、商品ごとに決めておきます。1日あたりの平均販売数にリードタイムの日数を掛け、余裕分を足した数が目安になります。
1日2個売れる商品で、届くまで14日かかるなら、28個を切った時点で発注が必要です。ここに数日分の余裕を足しておくと欠品を防げます。
売れ行きが伸びている商品は、余裕を多めに取ってください。想定より早く在庫が尽きることがあります。
この基準があれば、毎回悩まずに済みます。判断にかける時間も減ります。
売れ行きが変わったら発注点も見直します。数か月に一度は計算し直してください。
発注点を在庫表に記載しておけば、更新のたびに自動で気づけます。判断を仕組みに任せてください。
商品ごとに動きを分類する
すべての商品を同じ扱いにする必要はありません。よく売れる商品、そこそこの商品、動かない商品に分けて、管理の力の入れ方を変えてください。
売上の大半は一部の商品が生んでいます。その商品の欠品だけは絶対に避けるという優先順位をつけると、限られた資金を有効に使えます。
動かない商品は、そもそも扱いを続けるかどうかから見直します。
売上に占める割合を出してみると、力を入れるべき商品がはっきりします。上位の数点で大半を占めていることが多くあります。
管理の手間も上位の商品に集中させてください。すべてを同じ精度で管理しようとすると時間が足りなくなります。
滞留在庫は早めに現金化する
動きが止まった在庫は、時間が経つほど価値が下がります。保管費用は在庫期間に比例して増え続け、季節商品なら時期を過ぎた時点で売れなくなります。
利益が出なくても、原価を回収できる価格で売り切って現金に戻すほうが、抱え続けるより損失は小さく済みます。
損切りは早いほど傷が浅く済みます。取り戻そうとして価格を維持し続けるのが、最も損失を大きくする判断です。
セット販売にする、別の販路に出すといった方法で動くこともあります。1つの売り場で動かないなら場所を変えてみてください。
いつまで動かなければ処分するかを、あらかじめ決めておくのも有効です。基準がないと判断を先送りしてしまいます。
90日動かなければ値下げ、180日で処分といった形で数字にしておけば、感情に左右されずに判断できます。
季節性を考慮する
売れる時期が偏る商品は、在庫の持ち方も変わります。需要が立ち上がる前に仕込み、ピークを過ぎたら残さないという計画が必要です。
前年の実績があれば、いつ動き始めていつ止まったかが分かります。記録があるほど、翌年の判断は正確になります。
慣れるまでは、通年で需要のある商品を中心に扱うほうが安全です。
季節商品を扱う場合も、全体の一部にとどめてください。資金の大半を季節性の高い商品に置くと、外したときの影響が大きくなります。
年末の棚卸しは必須
物販で避けて通れないのがこの作業です。
棚卸しをしないと所得が確定しない
12月31日時点で売れ残っている在庫の数量と金額を確認する作業が棚卸しです。この金額が分からないと売上原価を計算できず、所得も確定しません。
年が明けてから在庫が動いてしまうと、正確な数字を出せなくなります。年末のうちに必ず実施してください。
作業自体は、在庫表と実物を突き合わせるだけです。日頃から更新していれば、数時間で終わります。
記帳の方法や必要な帳簿については、国税庁が案内を公開しています(参照:国税庁「帳簿の記帳のしかた」)。
数量と取得価額を記録する
必要なのは数量だけではありません。それぞれの商品をいくらで仕入れたかという金額も必要になります。
倉庫サービスに預けている分も在庫に含まれます。手元にないものを数え忘れないよう注意してください。
日頃から在庫表を更新していれば、実物と照合するだけで終わります。記録がなければ、すべて数え直すことになります。
棚卸しの結果は、翌年の期首在庫としてそのまま使えます。年ごとに形式を揃えておくと管理が楽になります。
評価方法を統一する
同じ商品を違う価格で仕入れている場合、どの価格で評価するかを決める必要があります。評価の方法は年によって変えず、統一して使い続けてください。
売れる見込みがない在庫の扱いに迷う場合は、税務署に確認してください。自己判断で処理すると、後から指摘を受けることがあります。
評価方法を変更する場合は、事前の手続きが必要になることもあります。変えたい事情が出てきたら早めに確認してください。
なお、税制や取扱いは改正されます。個別の判断については税務署または税理士にご相談ください。
在庫管理でよくある失敗
最後に、つまずきやすい3つの場面を挙げます。
記録を後回しにする
最も多い失敗です。忙しさを理由に更新を止めると、数が合わなくなって修正に時間がかかります。
1日5分の作業を溜めると、月末に数時間の作業になります。その負担が大きくなるほど、さらに後回しになるという悪循環に入ります。
完璧な記録を目指すより、雑でも続けるほうが価値があります。まず更新する習慣をつけてください。
記録が溜まれば、売れ行きの傾向も見えてきます。次に何を仕入れるべきかの判断材料にもなります。
記録の習慣が結果を分ける点については、物販副業×Amazon OEMで”成果が出る人”はここが違う!3つの思考の罠でも触れています。
保管場所を軽く見る
自宅で管理する場合、置き場所には限りがあります。収まらなくなってから倉庫を探すと、費用も手間も余計にかかります。
扱う点数を増やす前に、どこまでなら置けるかを確認してください。生活空間を圧迫すると、家族の理解も得にくくなります。
大型の商品は特に負担が大きくなります。扱う商品を選ぶ段階で、保管の条件も判断に入れてください。
商品の状態も保管環境に左右されます。湿気や日光で傷めば、その分が損失になります。
箱に入れたまま積み上げると、下の商品が取り出せなくなります。取り出しやすさも保管の設計に含めてください。
保管場所を在庫表に記録しておくと、探す時間がなくなります。件数が増えるほど、この差は大きくなります。
回転率だけを追って欠品する
在庫を減らしすぎると、今度は売る機会を失います。回転率が高すぎる場合は、欠品による機会損失が起きていないかを確認してください。
よく売れている商品ほど、切らさないことの価値は大きくなります。数字を追うあまり、売上の柱を失わないよう注意してください。
回転率は高ければよいというものではありません。欠品が続いていないかを、売上の推移とあわせて確認してください。
自社の商品を持てば、供給を自分でコントロールしやすくなります。仕組みの作り方はAmazon OEMで資産形成をめざす!初心者向けに”続く仕組み”を作る方法で解説しています。
まとめ|在庫の数字が資金の状態を映す
物販の在庫管理は、在庫回転率と在庫回転日数という2つの指標を押さえるところから始まります。売上原価を平均在庫金額で割れば回転率が出て、期間の日数を回転率で割れば回転日数が出ます。
個人の規模であれば、表計算ソフトで商品名、仕入れ数、単価、在庫数、保管場所を記録するだけで十分です。大切なのは形式ではなく、更新を続けられるかどうかです。
まずは今ある在庫を1度書き出してみてください。動いていない商品がどれくらいあるかが見えれば、次に何をすべきかも自然に決まります。業種ごとの財務の水準は、中小企業庁「中小企業実態基本調査」でも確認できます。




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